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執筆者の写真neki neki

初めての一人暮らし

学校修了前に、私は横浜へ移動した。 さすがに、使い慣れた東急東横線沿線に魅力を感じていたのだ。 しかし、なかなか人気なだけに高かった。

頑張って探した挙げ句に見つけた場所は、坂の上の白い建物だった。 こう書くと、お洒落~かもしれない。 しかし、実際は、駅から歩いて30分。バスで十数分。 バスの停留所から、春~夏は3分あれば十分にいけるが、 冬になると、10分程かかる。という場所。

住所は、横浜とは言えど、川崎のある地区とお隣同士。 坂を登ったら、川崎市という場所だった。 周りは、住宅地ではあるが、田んぼがあり、一応コンビニとファミレスがあり、 スーパーへ行くには、自転車がないと、行けない。

そんな静か~な場所に、本物の一人暮らしの開始である。 寮の時のように、共同で使う場所は、ゴミ集積所くらいである。 私1人になれる場所を、初めて手にいれた。 実家では、昔は、おじいちゃんおばあちゃん、おじさんおばさんのいる 大家族だったので、私の部屋はない。 ようやく、私の部屋を手にいれた時の感動は、未だに忘れられない。

部屋は、ロフト付きの1階角部屋。 1階が恐ろしいというのは、この時に味わった。 あまりに急な坂道の上に建物が立っているので、変な人も ここまでは登ってこられまい・・・と思っていたのだが・・・

窓を開けると、裏のガケがそびえたっている。 日が当たりにくかったので、洗濯も布団干しも、早めが肝心。 洗濯物は、もちろん、ほとんど部屋干しだったが、ある日、窓の外に じぃ~っと立つ人影を見たのだ。 それからというもの、窓も開けられない。

夏は、それなりに暑かったが、窓を開けず、エアコンに頼っていた。 そんなある夏の朝方、寝ていて、カサコソカサコソ…妙な音がし、 その直後、私の足の上にそれが乗ったのだ。 ヒュルヒュル~と気持ち悪い感触が伝わって、飛び起きた。 すぐに電気をつけて、見てみると、赤いラインがあり、細くて、 短いが、足がたくさんある。

す、すごい…ムカデが出るなんて…どこから入ったんやろ? 何か、足を刺されたようで、痛い。 虫さされには、キン○ンである。 思わず、キン○ンを塗ったら、飛び上がってしまった。 これで、大丈夫だろう…と思ったが、不安で友達に電話した。

ムカデに刺されたら死ぬよ~ とおどかす友達。嫌やなぁ~ でも、死んでへんで~あれ?ムカデやなかったんやろか? でも、赤い線が入った足の多い…これ、ムカデちゃうん?

???のまま、そのムカデも、その部屋から見つからず、 恐怖な日が続く。 それから、うっかりムカデの事も忘れてしまう位、月日が経った。 この間には、さまざまな見たこともない虫達が私を襲った。

そして、寒い冬が来た。 この頃、ドレスを着用する仕事をしていた為、片手にドレス、 片手にお化粧道具と譜面という出立ちで、外出。

寒い真冬のある日。外は、真っ白銀世界であった。 寒いはずやわ~と、グサグサ新雪を踏み締め、バス停に向かう。 最初に書いたように、冬になると、坂の下のバス停までは10分かかる。 この雪のせいなのだ。 雨でも、少し時間はかかるが、この雪のせいでエライ目に遭うた事がある。

バスってのは、大体定刻には来ないものだ。 それも踏まえて、早めに部屋を出たのに、間に合わなかった。 あと1/3!って所で、バスが来てしもた。 「待ってぇー!!」でっかい声で叫んだが、雪に声を吸い取られ、 私の声は、妙にマットな音になっていた。 慌てて、誰かが残した足跡の上に足を載せた瞬間、 ドッテーン!!とひっくり返ってしまった。 その瞬間、バスは虚しく行ってしまった・・・

(見捨てんといてぇ~~~)誰もいないバス停で、 履いてたパンストはボロボロ、コートはズクズク、コケた衝撃で 持ってた傘まで折れてしまった。 はぁ~こんなんで、会場へは行きたくないなぁ~ と思いつつ、持ってたハンカチで拭きながら、次のバスで向かった。

この場所では、試練というものを学習した気がする。 エレクトーンという楽器に限界を感じたのもこの頃である。 仕事も勢いでやっていたが、自分の事を冷静に考え、一度京都に帰る事になる。

しかし、この頃は毎日がドタバタ劇で、ハチャメチャやったなぁ~ 住んでいた場所のせいか?? 青いなぁ~

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