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執筆者の写真neki neki

バイト遍歴3

エレクトーンの仕事を書く事にしよう。 ホテルや、結婚式場での演奏の仕事。 他にレストランでも弾いていたが。 ブライダルフェアの季節になると、モデルもやらされる。 何回、ウエディングドレスを着た事か・・・十二単も着たなぁ~ 日本髪のカツラをつけ、十二単という、奇妙な取り合わせやった。

その日に、初めて逢う旦那さん役のモデルさんと 何枚もの写真におさまってる私。変な感じ。 さすがに、それだけドレスを着ると、ドレスに対して新鮮味がない。

演奏の仕事でも、私のユニホームは、ドレスだった。 フォーマルドレス着用と決まっていた。 華やかな場所での仕事ではあったが、 演奏する曲は、もちろんラブソングだけ。 それ以外の曲は、ほとんど演奏させてもらえない。

ある時期、パーティや結婚式、イベント、あちこちに呼ばれて、 かなり多忙だった事がある。 この仕事は、司会者の方とのタイミングが、掴めれば、楽勝であった。 会場が真っ暗になっても、手探りで弾ける。 そんな根性さえあればできたのだ。

最初のうちは、披露宴の最後にある 「両親への花束贈呈」の時になると、「秋桜」を弾きながら、 私も一緒に涙してしまった。 慣れるまでは、グズグズ泣いていた。

披露宴で、新郎新婦の生い立ちから始まり、馴れ初めを聞き、 数時間のうちに、とても身近に感じてしまうのだ。 まるで、身内に近い感覚をおぼえ、 つい一緒に涙する一幕が、よくあった。

しかし、そう毎回泣いていては、仕事にならぬ。 ある日、段取りのとても悪い披露宴に当った事があり、それ以来、 感情は、別の場所に置いておく術を習得した。

大体、披露宴でのお客さんの出し物は、決まっている。 伴奏を頼まれる事もあったが、知ってる曲がほとんどである。

ところが、パーティーとなると、勝手が違ってくる。 あるパーティーで、元歌手やったらしい方が、 登場された時は困惑した。

客「私、○○年前に1曲、世に出してまして、 それを今から披露したいと思います。曲名は、○○○○」 ねき(え?聞いてへんで~カラオケあるんやろか?)と心の声。 客「それでは、伴奏お願いします~」 ねき(うわっ、来たで~もぉ~) 客「キーは、Gで~」 ねき(いるんや、こういう人がぁ…どんな曲か全然知らんねんけど…)

すると突然、そのお客さんは、歌いだし、もう誰にも止められない。 しかし、音痴ではなかった。それがよかった。 キーは、Gではなかったが、すぐに感じが掴めたので、 様子を伺いながら、入っていった。 これは、もうセッションである。 何だかわからんセッションである。

曲は、随分昔風で、先が読める構成やった為、十分な伴奏が出来た。 それが、お客さんには、とても気持ちよかったらしい。 御祝儀をいただいてしまった。

そんな美味しい仕事を、辞める日が来るとは全く思わず、 結構長い間、携わっていた。 こういうのは、続けていると、自分が見えてくる。 レベルアップさせたいから、曲を自分でアレンジしてしまお~とか、 安っぽい曲は、やめてしまお~とか、 もっと雰囲気出せへんかなぁ~とか、変化したくなるのである。

この仕事だけで、生活していた事もあって、 結構いろいろと楽しんでいた。

しかし、ある日、とんでもない失敗をした。 披露宴を行う場所は、ホテルや、式場に限らず、 その場所に関係している人達は、玄関から、気を配っている。

おもてなしの極意である。

大分キャリアを積んできたある日、何を勘違いしたのか? 入り時間を間違い、大幅な遅刻をしてしまった。 もちろん、遅刻厳禁なのだが、 披露宴会場にお客さんが入場する時間に、 私は、会場に到着し、慌てて着替え、荷物を持って、裏口から 会場へ入ろうとしたのだが、この慌てぶりが、ひどかった。

裏口へ行けなかったのだ。 しょうがないので、お客さんが集っている中を、走る、走る、走る! 私の頭の中は、誰よりも早く会場に入らなければ!しかなく、 ドタバタと、それはそれは、やかましかったに違いない。

滞りなく、披露宴は終了し、ホッと一息ついたのだが、 その後で、会場のマネージャーから、めちゃくちゃ怒られた。 会場では、おもてなしの極意を、皆で守ってるってのに、 私がぶち壊してしまった!と、さんざん怒られたのだった。

その一件で、1ヶ月の謹慎となり、1ヶ月の間に、他の仕事を探し、 たまにパーティーに呼ばれる事はあったが、多忙にはならず、 自然消滅していったのだった。 仕事で、自然消滅したのは、これだけかもしれない。

この仕事では、場の空気を感じよう、という事を学んだ。

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