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執筆者の写真neki neki

バイト遍歴2

とある大手のデパート商品券売り場、というのもある。 こちらは、大学生のバイトが多かったので、 ワイワイ賑やかやった。 商品券は、ペラペラの紙だが、 これはデパート内で通用するお金である。 初めは、ほとんどママごと遊びの延長上にしか思えなかった。

まずは、ラッピング方法を習う。 接客には、それ相応の技術ができないと、させてもらえない。 このラッピングが結構難しかった。 角をピシッと折れば、割りと綺麗に包める事を学ぶ。 ここで、しっかりできないと、後でえらい事になるのである。

厳しい部長さんに教えてもらったおかげで、 ピシッ、パリッと包めるようになった。

いよいよ店頭で、接客開始! 私自身も、家族に頼まれて、買う事があったが、まさかこんなに 忙しいとは思わなかった。 会社単位で来られる事もあるのだ。

お祝い返しに…とか、香典返しに…っという数は、とても大変である。 熨斗紙の色々も、ここで学んだ。 1人で、ひたすら包む、包む、包む!30~50とか平気である。 はぁ~私、機械みたい… と思いつつも、何か楽しい。

当時の、そのデパートの売り上げ達成曲が、なぜか「花のワルツ」で、 毎日、ウルウルしてた。

夕方頃に、金額が達成すると、流れるのだ。 状況はどうであれ、全曲流されると、ちゃんと聞いてしまう。 グスグスくるのであった。 時には、聞かないようにしたり、無意味に同僚と喋ったりした。

ある日、プライドの高そうなお客さんの担当になった。 身なりは、もちろんちゃんとしている。 高そうなバッグをカウンターに置き、注文された。

私は、事務的に色々こなしたのだが、どっかで見た事のある顔。 え~っと…誰やったかなぁ? はっ!気がついた瞬間、「先生、○○先生やないですか?」と私。 客「は?」 あまりにも唐突ではないか?自分でも(やってしもた…)と思いつつ、 「すいません、私、五条の…」と言いかけた時、その人は、 「あら?蒲鉾屋さん?」と。 やっぱりそうやった。初めてエレクトーンを習った先生だった。

懐かしい。ほんまに懐かしかった。 「あら~、お父さんお母さん、お元気?」 先生の方から、言うてくれはったのは嬉しかった。 和やかに話しながら、テキパキ包み、ありがとうございました~! と、見送った後、気がついた。

先生の名前は、○○ではなく、△△だった… 全然違う名前を言うたのに、よくわかってくれはったなぁ~ 名前を間違うなんて、失礼にも程がある。 私って…全然あかんやん。

その後も、お中元、御歳暮と、その時期になる度、 デパートに呼ばれ、しんどかったが楽しいバイトであった。

ある晴れた春の日、お菓子屋さんに魅了された事がある。 あちこちバイトを探していて、ここなら、いいかも?と思った。 老舗の和菓子屋さん。

しかし、ここ程、キツイ仕事はなかった。 バイトを雇う必要がなかったと見える。

お店は、おばさんが数名、タグを組んでる。 2人程、若い人がいるが、おばさんと付き合うのがかなり上手そう。 お客さん向けの顔と、ウチらに対する顔が違うのだ。 怖かった…実に怖かった。

初日、待ってました!とばかりに、イジメが始まる。 どうやら、おばさん達の暇つぶしの餌食になったみたいである。 2日目も、同じく。 私が、そのお店にいる必要が、全く見えず。 休憩場所や、時間や、そういう仕事のルールしか教えてもらえず、 売り場に関する事は、何も教えてくれないのである。 3日目。 包装の仕方も、ろくに教えてもらえず、いきなり1人で「柏餅」を 売らされる。この1人ってのが、私にはよかった。 はぁ~ヤレヤレ…と一息つけるのだった。

老舗なので、売り方やら何やらあると思ったのだが、 聞くと、袋に入れて渡せばいいとしか答えてくれない。 ただ、これ1ケース売ってきて!と、でっかいケースを渡された。

しょうがないなぁ~おばさんは…と思いつつ、自由に売らせてもらった。 人通りの多い場所やったので、声を出さないと、 私がいるのかどうかわからない。 私は、いじめられてモヤモヤしてた気分を声に出した。

「柏餅、いかかで~すか~~」(…レレレのおじさんではない)

すると、来るわ来るわ、一時期人だかりの山ができた。 エライ事に、売り切れてしまい、追加をお願いした。 おばさんは、キョトンとしている。 もちろん、私もキョトンとしていたのだが、これを機に、 おばさんの中の1人が、手伝ってくれはった。 いい人もいるのだ。

しかし、売れる、売れる! 柏餅は、私に任せてくれぇ!って状態である。 店頭で販売してる物は、滞ってるのに、 別の場所で臨時販売している方が、売れるのだ。

私自身、名誉挽回のつもりやったが、帰りに、 「ちょっと売れたからって、いい気にならんときや!」と、 おばさんは、どこまでも嫌な感じ。 しかし、そんな事、もうどうでもよかった。 次の日に、同じ場所で「柏餅」を売り、早くに売り切れになり、 売り場に戻る。

すると、暇やったおばさん達の攻撃開始、しんどくなった。 聞いても、何も教えてくれないのに、 私のする事ばかりに、文句を言うのだ。 包み方1つ取っても、何も教えてもらえなかったので、 お客さんの前で四苦八苦していると、ねきででっかい声で怒られる。 飛び上がりそうになるのだ。

ウチは、シンデレラやないぞ~! 一瞬、おばさんに逆襲しようか考えたが、 何せよく喋る人だったので、口では負ける。 勝てそうなものがないので、やめた。 だんだん、身体がおかしくなってきた。 気分は、いつもグッタリ。 話しかけられても、気はそぞろ(それは今もか?) この世に楽しいものなんて、ないわ~ 何で、こんな事してるんやろ??と、 どんどん深みにはまってきた所で、アホらしくなり、 ある日「やめます!」って一言残して去った。

おばさん達は、何だか慣れてるようで、「あ、そう」とだけ言った。 バイトでの利益は、ホカホカの柏餅をいただけた事だけである。 お店の品物は、どれも美味しそうやった。 柏餅は、絶品であった。

数日後、バイト料を取りに来てくださいって電話をもらったので、 渋々行ってビックリした。 40人程、店内に列を作っている。みんなバイトだった人らしい。 私の前にいた人に、話を聞いてみると、 みんな1日だけとか2、3日でやめた人達だった。 なんとまぁ・・・いつになっても、学習されないお店だった・・・ 潰れないのは、味を保ってるからなのだろうか?

しかし、もう、あんな仕事はしたくないなぁ。

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